「教育」と「雇用の創出」で、貧困の連鎖を止める。
当社の代表の臺(うてな)が理事を務めるNPO法人ロータスチルドレンによる「TERAKOYA」プロジェクト

1950年代、マニラ・トンド地区には大量のゴミが集められるようになり、積み上がったゴミが自然発火して煙を上げることから、「スモーキーマウンテン」と呼ばれるようになりました。やがてゴミの中から金属やプラスチックを拾って生計を立てる人々が集まるようになりました。ここは「ハッピーランド」と呼ばれていて約12,000人が暮らしています。

この地域は、今は舗装されている道もありますが、もともとゴミが積み上げられてきた場所です。家も木材やトタン板でつくられた簡単なつくりが多く、雨風をしのぐための小さな小屋のような場所も少なくありません。運ばれてきたゴミや回収された資源が積まれ、そのすぐ近くで人々が暮らしています。
このスラム街では、ゴミの中から鉄・アルミ・プラスチック・段ボールなどを拾い集め、それを売って生活する人たちがいます。こうした仕事は「スカベンジャー」と呼ばれ、朝から晩までゴミの中をかき分けて家族の生活を支えています。1日の稼ぎは平均200ペソ、約540円ほどと言われています。このスラムでの仕事といえば、他には男性ならたまにある建設の日雇い、女性はニンニクの皮むきの仕事が多く、最低賃金の保護すら受けられない不安定な労働ばかりです。親がこの状態では、子どもを学校に通わせ続けることも難しくなります。

子どもたちは、この土地で生まれ、この土地で育ちました。ここが当たり前の暮らしです。朝ごはんが「パグパグ」と呼ばれる、ゴミから集めた食べ残しを揚げ直した食事で、1袋50〜80円。それで一日のお腹を満たす家庭もあります。道端の犬や猫も、骨が浮き出るほど痩せています。結核や腸チフスも珍しくない。でも薬は手に届かない。栄養も医療も足りていない。それが、この街の「ふつう」です。


けれど実際に歩いてみると、路地を曲がるたびに子どもたちが「What’s your name?」と駆け寄ってくる。お金をせびるわけでもなく、ただ人懐っこく、まぶしいほど明るく笑いかけてきます。厳しい暮らしの中にある、この笑顔。私たちのプロジェクトは、そこから始まりました。不思議なことに、この街の子どもたちは物乞いをしません。もともとは現地語ハピラン(Hapilan)が「ゴミ捨て場」という皮肉な名前の街ですが、どんなに貧しくても人々は驚くほど“ハッピー”に暮らしているのです。

ハッピーランドがあるトンド行政区を統括する担当の方に、現状の問題点を聞いてみました。この行政組織を「バランガイ」と呼び、マニラには数十か所もあり、日本の町内行政に似ていて地域に最も近い組織で、地域の治安維持、医療、スポーツ、教育、公共事業、環境緑化、財務の7つの役割を果たしているところです。

私たちがバランガイのマフェさんに「私たちNPOは子ども達に文房具を配ったりと支援活動をしてきましたが、他に何を支援すべきか?」と尋ねたとき、返ってきた答えは意外なものでした。「何度も私たちを助けていただき、本当に大きな存在だと感じています。ただ本当に必要なのは、お母さんたちの仕事です。ここの住民の多くはゴミ拾いで、収入が本当に足りないと訴える母親がたくさんいます。」


「高齢者の高血圧の薬も常に不足するので、寄付があればすべて薬に投入している。それでも足りずチェアマンは毎月自腹で薬を買い足している」とマフェさんは話した。
子どもに学用品を届けても、親に安定した仕事がなければ「学校に行くより稼いでこい」と言われてしまう。親たちも、多くは十分な教育を受けておらず、これが次の世代に引き継がれていく。マフェさんはインタビューで「学校に通えていない子どもたちのために教室を開きたいと、あなた方が言っていただいている事にも、とても共感しています」とも話した。


「子どもたちが学べる場所と、若者が仕事に挑戦できる場所を、同じ屋根の下につくろう…」その思いから、私たちNPO法人ロータスチルドレンは、2026年6月19日に「TERAKOYA」を開設しました。現地行政であるバランガイ公認のもとに始まったプロジェクトです。拠点もバランガイから借り受け、インタビューに答えてくれたマフェさんを中心に人的サポートも受けています。開会式にはバランガイ・チェアマンが長期出張だったため、彼女の息子さんが挨拶に訪れていただきました。
私たちが最初に始めたのは、日本の中古品を、スマホ1個で売る仕事です。フィリピンではFacebookのライブ販売が普及しています。大きな店舗も設備も学歴もいりません。スマホの前で商品を紹介し、注文を受け、発送する。最初にライブ販売に挑戦したのは、ハッピーランドで暮らす24歳の女の子カミールさんです。

両親と9人の姉妹の合計11人で暮らす狭い家。カミールのお父さんは倉庫の清掃の仕事で日給600ペソ(約1,600円)ほどの低賃金で働いていて、お母さんは1日8時間かけてニンニクの皮をむいて200ペソ(約540円)を稼ぎます。9人の小さな子を育てていますので、インタビューでも「寝る時間が無いこともあり、とてもきつい」と話してくれました。

彼女の家に足を踏み入れると、その狭さに言葉を失います。ゴミ山の中に建てられた家に、姉妹9人を含む11人が暮らしている。電気代、ガス代、すべてがぎりぎりの生活です。

カミールさんは9人姉妹の長女。生活が厳しく家族を支えるために、高校を途中でやめざるを得なかった過去があります。でも彼女はもう一度学校に通い直して学びたい、という気持ちが強く、今回のバランガイから推薦されてTERAKOYAプロジェクトの第一号に選ばれました。そして今、ついに今、高校も通いなおすこともできるようになりました。インタビューでは「このネット販売もずっとやっていきたい。将来的には自分で経営してみたい。」と夢を語ってくれました。

最初は、経験のある仲間たちに手伝ってもらいながら、初めてのライブ販売が始まりました。普通の食器。なかなか売れません。商品も高価なものでもありません。チャンネルがまだ育っていないので見に来る人も少ない。それでも、カミールさんはがんばって声を出し続けています。そのうちに、少しずつ注文が入り始めました。「Thank you Madam!」初日は3時間しゃべり続けて1万円ちょっとの売り上げ。木下理事長も、当社パワーセラー代表の臺(うてな)も「思っていたより厳しいしですね。少しの投資だけでそんなにうまくいくものではないけれど、その先を続けていくために、また明日頑張ろう。必ず賛同者もでてきてもっと大きくできる」と、前を向いて続けていく覚悟があります。

この仕事を挑戦する子たちは、生活費を稼ぐだけでなく、販売・接客・在庫や金銭の管理といった経験やスキルを、実践で身に着ける事もできるのです。日銭を稼ぐのが精いっぱいのこの街に、新しい仕事で得られるものは、たくさんあります。

このTERAKOYAのある場所は、ハッピーランドの入口に位置しています。「アジア最恐のスラム街」と銘打って、たくさんのYoutuber達が撮影に訪れる場所です。でも、ここで学ぶ子どもたち、ここで働く彼女の姿は、周りの子どもたちも見ています。いつかは成功して「あの人みたいになりたい」と、みんなの目標のような大人になって欲しい。この土地を貸していただいた行政のバランガイの方々の思いも込められています。一人の挑戦が、やがて広がっていき、街を変えていく影響力をもっていく…。そんな場所にTERAKOYAは建てられました


彼女が売っている商品は、どこから来るのでしょうか。日本の中古品がハッピーランドでは新しい価値になります。日本で役目を終えた一つの中古品。もしかしたら捨てられてしまていたかもしれないその品物が、この事業を動かす力になっています。それは彼女が売る商品にはならないかもしれませんが、一つ一つの品があることで、彼女のもとに商品が届き仕事になっています。すべてがつながって続いていきます。それがTERAKOYAの中古品販売の仕組みです。
日本からコンテナに積まれた中古品がフィリピンに届きます。オークション会場で一般の人の手に渡っていく商品があり、その中の一部の食器、バッグ、飾り物などが、ライブ販売用の商品になります。一つのコンテナが、仕事と学びの両方を運んでいます。

このプロジェクトは、日本の一般のお客様からの中古品の物資の寄付なしには成り立ちません。寺子屋でのネット販売に使うのは、その中のごく一部の商品ですが、お客様からいただく一つの不用品であっても、コンテナを動かすための大切な物資として、すべての事業、すべての社会がつながっているのです。その気持ちで、多くのお客様や、業者の方々に協力を呼びかけています。

私たちはライブ販売で収益が生まれたら、ここで子ども食堂の運営や、炊き出しを行う費用にあてていきたいと考えています。「朝、何を食べてきたの?」「ビスケット」。スラム街では、子どもたちの栄養状態にも大きな課題があります。お腹を満たせる環境が、学びや良い生活の土台になっていきます。
栄養が足りなければ、仕事にも遊びにも学びにも集中することもできません。スラムの子どもたちにとって、食事の支援は教育支援と同じくらい重要な土台です。物を売って終わりではなく、その先に子どもたちの食事という大きな目標があります。

子ども食堂の計画を話したところ、現地で和食店を営むオーナーが「協力したい」と名乗り出てくれました。一つの行動が、次の協力者を呼んでいます。この目標の実現には、まだまだ支援が必要です。
フィリピンでは授業料は無料。でも制服、文具、交通費は家庭の負担です。法律では子どもを働かせることは禁止されていますが、現実には家族を食べさせるために働かざるを得ない子どもがいます。児童労働者の約6割が小学6年にすら到達できていないというデータがあります。学校を離れれば、待っているのは親と同じ不安定な仕事。貧困の連鎖は、ここで始まります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| スカベンジャーの日給 | 200ペソ(約540円) |
| マニラの最低賃金(日給) | 695ペソ(約1,880円) |
| パグパグ(廃棄食)1袋 | 20〜30ペソ(約50〜80円) |
| 児童労働者の小6未到達率 | 約6割 |
| 10代の妊娠経験率 | 約10人に1人 |
ライブ販売と同じTERAKOYAの同じ場所で、動き出したのが、子どもたちの「教育」です。読み書き、そして日本語の教室。がんばった子には、その先の道も用意しています。

現地の日本語学校「ONE WORLD」の黒川社長は「TERAKOYAで頑張っている子を、本校への特待生として授業料無料で迎えたい。」と語っていただきました。日本語が少しでもできれば、将来は日本で働く道も開けます。周りの子たちの見本になるような子が出てきてほしいと願っています。2026年7月25日から毎週日曜日に開催することが決定しました。



NPO法人ロータスチルドレン理事長の木下優です。長年にわたりフィリピンのスラム街で支援を続けてきました。親を亡くした女の子への支援、クリスマスの食事や文房具の配布、ミサンガ作りや祭りのダンスイベントを開催。できることを一つずつ届けてきましたが、そこからもう一歩先へ進みます。学びと仕事という「環境」を提供し続けていきます。私自身、株式会社エコレグループと、フィリピンのオークション会場ATC JAPAN AUCTIONの経営で20年以上、中古品の海外輸出に携わってきました。今回のライブ販売は低資本で始められる、時代に合った仕事です。TERAKOYAで経験を積んだ若者が、将来は他のリサイクルショップや販売店でも通用する人材に育ってくれたら嬉しいです。

木下 優(NPO法人ロータスチルドレン 理事長)
臺 真樹(理事/株式会社パワーセラー代表)
日本企業によるスポンサー支援。開会式には日本のスポンサー企業が複数参加し、子どもたちにバッグを配布しました。企業の社会貢献が、海を越えてこの街に届いています。TERAKOYAは教育も、雇用の創出も、食事も、幅広い視点で子どもたちの未来を支えていきたいと考えています。空手を教えたいという方。ダンスを教えたいという方。話が広がるたびに、「自分も何かしたい」という人が現れています。世界はどこかで繋がっいて、この先もずっと続いていく。その気持ちが、このプロジェクトの根本にあります。

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